総門
華やかな文様が迎える正門
二尊院を訪れた際に、最初に出会うのが「総門」です。慶長十八年(一六一三)に伏見城にあった薬医門を角倉了以によって移築・寄進されたものです。室町時代の建築として京都市指定文化財となっています。総門には文様(装飾のための図柄)があり、唐草模様、数珠入り三つ巴紋、桃の巴蓋瓦など多彩。平成二十六年(二○一四)には瓦葺き工事により江戸時代の柄のまま復元されています。
紅葉の馬場
春夏秋冬の彩りが広がる参道
総門を抜けた先に広がる、真っすぐに伸びた参道は「紅葉の名所」として親しまれています。約百メートルの間にモミジとサクラの木が交互に植えられており、秋は赤や黄の色鮮やかな紅葉のトンネルを魅せてくれます。小倉山を背景に、春は華やかな桜色に染まり、夏は色濃く重なる緑に覆われ、冬は霜に輝く木々が連なり、四季それぞれの風景を楽しめます。帰り道、石段の上から眺める参道も見物です。
勅使門
天皇の使いだけが通れた門
本堂へと続く門は、天皇の意志を伝えるために派遣される使いの「勅使」が出入りする際に使われていた勅使門。弓を横にしたような形で中央が高い「唐破風形」の屋根をしています。かつては、勅使が訪れた時のみ開門していたため、格式高い特別な門です。今日では参拝した誰もが通ることができますが、歴史的背景を知ると通るたびに厳かな気持ちにさせられます。
本堂
平成の大改修で、美しさ再び
二尊を安置してある本堂。六間取り方丈形式の間口の広い建物は京都市指定文化財。室町時代の応仁の乱(一四六七〜七七)の兵火で諸堂が全焼しますが、永正十八年(一五二一)に三条西実隆が諸国に寄付を求めて再建。本堂に掲げられている後奈良天皇の自筆による「二尊院」は、この再建時に与えられたものです。平成二十八年(二〇一六)には、約三百五十年振りとなる平成の大改修が完了。由緒ある寺院にふさわしい壮麗さを取り戻しています。
八社宮
八社を祀る、表鬼門の社
紅葉の馬場を抜け、西へ行くと本堂ですが、東へ進むと「八社宮」があります。境内の東北に位置し、表鬼門としてつくられた社です。その名の通り、伊勢神宮・松尾大社・愛宕神社・石清水八幡宮・熱田神宮・日吉神社・八坂神社・北野天満宮の八社を祀っています。室町時代末期の建築として京都市指定文化財に指定されています。
弁天堂
弁財天の化身である九頭龍大神・宇賀神を祀るお堂。
弁財天を祀る由来は、当院の『二尊院縁起』に見られます。第三世湛空上人の時代に、四あし門(現在の勅使門)に当院寺名の額があり、その額を夜々に門前の池(竜女池)より靈蛇が出て、字形や彩色が消えるほどに舐めてしまい、これを防ぐため、湛空上人は靈蛇に自らの戒法を授けるため血脈を書いて池に沈めました。すると竜女成仏の証拠として千葉の蓮華一本が咲いたといいます。弁財天の他に大日如来、不動明王、毘沙門天等を安置しております。
しあわせの鐘(鐘楼)
三回ついて、しあわせを願って
梵鐘(釣り鐘)をつるす堂「鐘楼」は、慶長年間(一五九六〜一六一五)に建立。梵鐘は慶長九年(一六〇四)に鋳造し、平成四年(一九九二)に、開基嵯峨天皇千二百年御遠忌法要記念として再鋳。「しあわせの鐘」と名付け、「自分が生かされているしあわせを祈願」「自分のまわりの生きとし生けるものに感謝」「世界人類のしあわせのために」と、鐘を三つ撞いてそれぞれに祈願していただいています。
湛空廟
石段の先で出会う、石碑と風情
本堂としあわせの鐘の間に、木々に囲われた石段があります。真っすぐに上がった先に待ち受けるのが「湛空廟」。二尊院で教えを広めた僧、湛空上人の碑を収めています。建長五年(一二五三)に中国の石工によって彫られた碑と思われ、碑堂は室町時代末期の建築として京都市指定文化財になっています。ここは小倉山の中腹にあたり、景色もよく、澄んだ空気を味わえます。
茶室「御園亭」
皇女の御化粧之間でお茶を味わう
本堂の隣にある書院の奥に、春と秋の一時期だけご利用いただける茶室があります。ここは、後水尾天皇の第六皇女である賀子内親王の御化粧之間であったものが二条家に与えられ、その後、二尊院に移築されました。皇女が使われていたお部屋とあって、繊細な欄間など上質な趣が漂います。「御園」とは御所の庭を意味しており、茶室から覗く美しい庭を眺めながら、ゆったりとした時の流れに身を任せてください。
二尊院普賢象桜
上品な花を開く、稀少な桜
しだれ桜が終わる四月半ば過ぎから咲き始める「普賢象桜」も魅力の一つです。八重咲きの桜ですが、花の中央から二つの変わり葉が出て、これが普賢菩薩の乗っている白象の牙を思わせることから「普賢象桜」と呼ばれます。また、希少な「二尊院普賢象」という桜があり、花弁数二〇〇〜二三〇枚を数え、気品のある淡紅色の花を咲かせます。本堂横の石垣の中にあり、五月の連休まで咲いている日本で一番遅咲きの桜とも言われています。